【第85話】『宇宙太陽発電所』構想
皆様、明けましておめでとうございます!☆::*Happy-New-Year*::☆
旧年中は大変お世話になり感謝しております。本年も宜しくお願い申し上げまするぅm(_ _)m(→なんだか、年賀状の挨拶みたいですな(;´Д`))
さて、本年の一発目は、『宇宙太陽発電所』構想のお話。以前、花爺のブログ(【第40話】宇宙太陽光発電の話)でも宇宙太陽光発電について触れましたが、また改めてご紹介致します。
宇宙太陽発電所と無線送電
“石油資源の枯渇、人口増大、地球温暖化などを解決する一つの方法としていま注目されているのが、宇宙空間で大規模な太陽光発電を行う「宇宙太陽発電所」構想である。24時間365日発電し続け、その電気をマイクロ波によって地上に送電して利用する。この分野で世界をリードする京都大学の篠原真毅教授に聞いた。
2001年に導入されたマイクロ波無線電力伝送実験装置「SPORTS5.8」の一部で、受電アンテナ衛星の模擬モデル。この受電アンテナ衛星模擬モデル
は、打ち上げ時には棒状に折りたたまれ、宇宙空間に達すると、自動的に展開し球状になる仕組みだ。それぞれの球面にはレクテナと呼ばれる受電素子が貼り付
けられている。
原発1基分の電力を宇宙で作る
宇宙空間に巨大な太陽光による発電所を作り、そこからマイクロ波を使って無線で地上に電力を伝送するという壮大な「宇宙太陽発電所」(スペース・ ソーラー・パワー・ステーション=SPS)構想が2009年に日本の宇宙基本計画に盛り込まれた。国家としてSPS推進を宣言したのは世界で初めてのこと だ。
「アメリカではNASAがSPSの研究を行っていますが、正式に国が認めたのは世界で日本だけです。SPSを手始めに、宇宙ステーションや宇宙コ ロニーなどへと宇宙環境利用を拡大し、宇宙空間にも人類の生存圏を広げることができれば、地球の人口が100億人を超えても生き残っていけます」と、京都 大学 生存圏研究所の篠原真毅教授(42歳、工学博士)は、熱い思いを込めて語る。
日本版SPSは過去、いくつかのモデルが作られているが、最新モデルでは約4平方kmの巨大な太陽電池パネルを持つ発電衛星を上空36,000キ ロの静止衛星軌道に打ち上げ、24時間365日発電し続け、地上で1GW(100万kW)の電力を得る計画である。これは平均的な原子力発電1基分に相当 する電力だ。システム稼働の目標は2030年である。篠原教授は、石油資源が枯渇する前に、将来的にはSPSを原子力発電に次ぐ安定で二酸化炭素フリーな エネルギー源として活用するべきだと考えている。
SPSの概念図。上空36,000kmの静止軌道上に打ち上げられたSPSは約4平方kmの太陽電池パネルを広げ、24時間365日発電し続ける。得られる電力は1GW(100万kW)に達し、平均的な原子力発電1基分に相当する電力となる。
SPSならば無尽蔵の太陽エネルギーをフルに活用できる上、1GW級のSPS1機を石油による火力発電と代替すると、年間600万トンの二酸化炭素 削減効果が見込まれる。また、気象条件によって発電量が左右される地上の太陽光発電に比べて、宇宙では単位面積あたりの年間利用可能エネルギー量は 5~10倍になるとみられている。
マイクロ波を使って送電するため、雲や雨などの影響を受けることもなく、送り先を自在に変えられる。国内で電力の不足した地域に素早く送電するこ ともできるし、海外に電気を輸出することも可能になる。複数の箇所に同時送電もできる。マイクロ波送電は現在2~5GHz(ギガヘルツ)の周波数帯で実験 が行われている。ちなみに、電子レンジもマイクロ波を使っていることは知られているが、その周波数は日本では2.45GHzが使われている。
しかし、空を飛ぶ鳥が送電中のマイクロ波ビームに触れて焼き鳥になるということはありえない。家庭用電子レンジが500Wを越すような高出力をあ の小さな箱の中に照射しているのに対して、SPSのマイクロ波は電力こそ100万kWと大きいが、約4平方kmの受電サイトに広く薄く電力伝送を行うため だ。一般人が立ち入りできない受電サイト以外は安全基準の1平方メートルあたり10W以下に設計されている。この出力であれば長時間浴び続けても安全とし た国際基準の範囲内である。
すでに技術的にはSPSを作ることはできるのだが、課題は機材の輸送も含めたコストだ。最新モデルでもSPSの総重量は1機で1万トン近くにな る。日本のH-IIBロケットで静止軌道上に打ち上げられる能力は約8トンにしか過ぎず、もっとSPSを軽量化するか、輸送力を高めなければならない。現 在、1kWhあたりの発電コストを8~9円まで引き下げるべく、篠原氏をはじめとした研究者たちは努力を続けている。だが、エネルギー問題は国家政策であ り、地球全体の緊急テーマだ。単にコストだけで論ずるべきものではないだろう。
人類をあと1万年生き延びさせる
SPSと無線送電の歴史は、エジソンと同時代の19世紀後半から活躍したニコラ・テスラにさかのぼる。テスラは地球全体に無線で電力を送る「世界シ ステム」を考えつき、装置の試作にも取りかかったが、成功しなかった。電力は無線で送れたのだが、当時のユーザーが必要とする電力に見合う電力を送れな かったのだ。
その後、1964年にアメリカでW.C.ブラウン博士を中心にヘリコプターにマイクロ波を使って無線送電を行う実験が行われ、その成功を受けて、 68年にアメリカのピーター・グレイザー博士によってSPSが初めて提唱された。オイルショックをきっかけに、NASAも本格的に検討を始め、5GWの SPSを60機打ち上げる構想を計画したが、研究は継続せず、その後、アメリカでは散発的な検討が行われるだけとなった。
一方、日本では京都大学を中心に80年代からマイクロ波無線送電およびSPSの研究が途切れることなく続けられ、90年代に入ると、現在の宇宙航空研究開発機構(JAXA)も含めた多くの研究機関やメーカーでもSPSの具体的な検討が進められるようになった。
「マイクロ波送電の技術では日本が世界をリードしています。国際学会でも日本の研究内容が一歩抜きん出ています。ただし、SPSは超巨大な宇宙システムで、一国で推進するには大変なので国際的な協力が必要でしょう」
京都大学ではこれまで世界的に評価される実験成果をいくつも上げてきた。83年には親子2台のロケットを使って、上空150~200キロの電離層 中で世界初のマイクロ波送電を行う「MINIXロケット実験」に成功。この実験は京都大学の現総長である松本紘名誉教授のリーダーシップの下行われてい る。
92年にはマイクロ波送電のみで模型飛行機を飛ばす「MILAX飛行機実験」に世界2例目として成功。このとき、篠原氏は修士2回生として初めて実験に参加した。
京都大学では80年代からマイクロ波無線送電とSPSの研究がずっと続けられてきた。現総長の松本紘名誉教授はこの分野をリードしてきた研究者で、篠原教
授も松本総長の薫陶を受けて、研究を続けてきた。世界でも高い評価を受ける実験成果をいくつも上げてきたが、写真の装置は92年に行われたマイクロ波送電
のみで模型飛行機を飛ばす実験に使われた飛行機。
これらを発展させ、93年に電離層プラズマ中においてマイクロ波送電を行う世界初の実験に成功。その後も地上での送電実験や、ターゲットに対して自動的に追尾して送電する実験などを次々と成功させている。
2000年には電気自動車に対する無線充電に取り組み、01年には太陽光発電とマイクロ波送電装置を装備したSPSの小型モデルである模擬太陽光 発送電装置「SPRITZ」を現在のJAXAなどと共同で開発、着実に実証実験に近づいた。09年には飛行船を使って上空30メートルから地上の携帯電話 に送電する実験を行った。送電装置に携帯電話の基地局を組み合わせれば、被災地で空からライフラインを確保できる。
宇宙太陽光発電の実証実験用小型モデルである「SPRITZ」の送電装置。ハロゲンランプの模擬太陽光で発電し、マイクロ波に変えて送電する。
篠原氏は京都大学の学生時代に松本紘総長の研究室に属したことから運命が変わった。松本氏は日本におけるSPS研究のリーダーで、「人類をあと1万年生き延びさせるという松本先生の話を聞いて感動し、就職しようと思っていたのを急遽変更して、研究室に残ることにしたのです」と篠原氏は語る。
その後、ずっと京都大学で研究を続け、助手から准教授、そして教授になり、師の夢を引き継いでいる。
「いま世の中にないものができあがる過程を見ることができるのは喜びです。これからのがんばり次第では、SPSが稼働する姿を目にすることができるかもしれません」
ユビキタス電源として注目される無線送電
篠原氏が研究室を持つ京都大学生存圏研究所には、研究機関としては世界で唯一、セラミック製の高耐電力電波吸収体を備えた壁を持つ電波暗室と、高出力の伝 送実験装置がある。ハイパワーのマイクロ波を送ると通常の吸収体では発火するおそれがあるからだ。国内の研究者にもこの施設が開放されており、誰でも利用 できる。最近では海外からの申し入れも多いという。
京都大学
生存圏研究所にあるSPS研究棟。壁面には篠原教授たち研究室メンバーの夢が描かれている。左から右へ時代の変遷を描いており、神々の時代から次第に進化
し、SPSさらには宇宙コロニーや宇宙観光の時代が訪れ、環境に関する全世界の人たちの関心の高まりや努力の結果、汚染された地球が再び美しさを取り戻す
という物語になっている。
また現在、より広い第2電波暗室も建設中で、完成すると実証実験用の発電衛星を格納して研究ができる。その第一歩として実験装置もできあがり、暗室内での実験が始まる。今後はその結果を踏まえて宇宙空間に10トン程度の実証用発電衛星が打ち上がることを期待している。
SPSの研究と並行して、実はマイクロ波を含めた無線送電研究がいま世界的な盛り上がりをみせている。
それは低消費電力のデジタルデバイスなどの発達で、ワイヤレス・バッテリーレスで、どこでも充電できる「ユビキタス電源」の必要性が増したからである。
たとえば、携帯電話やスマートフォン、ノート・小型パソコン、デジカメなどの充電や、家電機器・AV機器の電源コードレス化、さらには今後、電気 自動車への充電ニーズも高まる。ことに携帯電話やデジカメ、電気自動車など移動中に自動追尾しながら送電する技術が求められており、マイクロ波送電ならば 可能だ。京都大学でもすでに電気自動車への充電実験を行っており、ハイパワーで車の床下から急速充電することもできる。
「SPSだけでは夢物語に終わったかもしれませんが、2000年以降、ユビキタス電源の研究が世界的に進み、06年以降は産業化も進みました。あ と5年もすれば無線送電業界が成立するのではないでしょうか。その中でマイクロ波送電は周波数帯の認可を得られるかどうかなど課題も多いですが、技術的な 魅力があり、日本の強い分野ですから、産業分野で技術を発展させ、SPSにつなげていきたいですね」
高出力のマイクロ波を使った加熱によって新素材を生み出したり、木質からエタノールを作る研究も進んでおり、篠原氏は多方面の研究に関与している。
SPSという夢からさまざまな派生技術が生まれる。それこそ科学技術の醍醐味だろう。
研究が進む4種類の無線送電技術
SPSシステムは太陽電池と3つのサブシステムによって構成されている。それはマイクロ波発生システム(1)、送電アンテナ(ビーム形成制御)システム(2)、マイクロ波受電・電力変換システム(3)である。
マイクロ波発生システムでは、レーダーや電子レンジに使われているマグネトロンという電子管が主に使われる。半導体増幅器も利用できるが、マグネト ロンの方が効率もよく高出力であり、低価格だ。ただし、出力にノイズが多いので、低減する装置が必要となる。篠原氏の研究グループは低価格のマグネトロン で高品質のマイクロ波を発生し、制御することに成功し、特許も取得している。
ここで発生させたギガヘルツの周波数帯のマイクロ波を送電アンテナシステムのマグネトロン、もしくは半導体発振器と増幅器によってビーム状 に変換し、アンテナをコントロールしながら地上に向かって打ち出す。このビームの方向を動かすことで、送電先を自由に変えられるわけだ。そのビームをマイ クロ波受電器で受け取り、整流して利用できる交流電力に変換する。受電には「レクテナ」という受電素子が使われる。
送電効率は、(1)×(2)×(3)となるわけだが、それぞれの効率は80~90%と高いものの、掛け合わせるとマイクロ波の送電効率は約50%となる。
「それぞれ成熟した技術なので、効率を上げていくことはかなり難しいことです」と篠原氏。
実は電力に変換しなくても、マイクロ波の周波数を500MHz(メガヘルツ)まで落とせばLEDを点灯させることが可能だと篠原氏は言う。したがって、電波のまま使える家電製品ができれば送電効率は向上することになる。
実は無線送電はマイクロ波送電だけではない。現在、世界では「マイクロ波」「電磁誘導」「共鳴(共振)送電」「エネルギー・ハーベスティング」という4種類の無線送電技術が研究開発の対象となっている。
「電磁誘導」は、低周波(10MHz程度以下)の磁場を利用する。ICカードで採用されているのはこの方式だ。
この電磁誘導方式は送電距離があまりとれず、「非接触」と表現した方がよい技術であるが、有用な技術であるため、「ワイヤレス・パワー・コンソーシアム(WPC)」という世界的な組織によって規格の標準化が進められている。携帯電話などの無線充電をまず目指している。
「共鳴(共振)送電」は、送信側の共振器から受信側の共振器へ無線送電を行う方式だ。米マサチューセッツ工科大学(MIT)が2006年に2メー トルの距離を送電効率40%で、60Wの電力送信に成功したと発表して世界を驚かせた。共振させることで、送受電距離を伸ばし、間に障害物があっても問題 ないとされている。
「この技術はもともと携帯電話のフィルターなどに使われており、日本のお家芸とも言えるものでした。それを電力伝送に利用しようという発想がな かったので、MITに先を越されたのでしょう。電磁波利用とは少し異なる周波数利用(カップリングさせる)となるため、総務省もこの技術を応援しています が、基本特許をMITがすでに押さえており、実用化しても特許料はMITに入ることになる可能性が高いです」
総務省は電波利用懇談会で家庭内ワイヤレスプロジェクトを立ち上げ、その中で共鳴送電を使った無線電力伝送を取り上げている。それを受け、日本の 電機・通信の主要企業や研究者など120社以上が参加するブロードバンドワイヤレスフォーラムも09年7月に設立された。このフォーラムでは携帯電話、 ノートパソコン、デジカメ、薄型テレビ、AV機器、照明器具など家庭内のデジタル家電から、電気自動車や路面電車へのワイヤレス送電、工場内機器などの産 業向けまで幅広く利用シーンを想定している。
大器晩成型のマイクロ波送電
「エネルギー・ハーベスティング」は、環境内の電磁エネルギー(光・電波)、力学的エネルギー(振動・歩行などの人体の運動・空気流など)、熱エネルギーなど捨てられているエネルギーを収穫(ハーベスト)して電力に変換する技術である。すでに車や歩行の振動を利用した発電床や、ボタンを押すときの振 動で発電する電池レスのリモコンなども開発されているが、この技術はごく低出力の電力に限られる。
日本でもエネルギーハーベスティングコンソーシアムが2010年5月に設立され、規格標準化の検討などを進めようとしている。
「ただし、エネルギー・ハーベスティングもヨーロッパの企業が特許の多くを取っています。特にドイツの会社がかなり積極的に特許を押さえており、製品化ではその特許との差別化に努力が必要ですね」
こうした世界的な標準化・産業化の動きの中において、「マイクロ波送電」に関してはテスラ以来の成熟した技術であるため、すでに公知となった技術をベースとしており、技術の間口は広い。しかし逆にまだ標準化の検討は進んでおらず、特定の推進団体も存在しない。
「京都大学をはじめ日本の大学レベルでは研究が進んでいるのですが、なかなかビジネスにつながりにくい。マイクロ波はハイパワーで長距離を送電す ることもできるし、エネルギー・ハーベスティングのようにローパワー送電でも何でもできる。逆にそれが用途を絞りにくくさせているのかもしれません」
篠原氏としてはマイクロ波送電によるSPSの実現を最終的な目標としつつ、その他の3種類の技術にも関与し、標準化の検討にも加わっている。
「まずは共鳴送電かエネルギー・ハーベスティングを推進して無線送電業界を発展させ、その次にマイクロ波送電、そしてSPSの実現に向けて進みたいですね」
マイクロ波送電はいわば大器晩成型の技術といえよう。日本が伝統的に強いこの技術で、天空に巨大な太陽発電所が誕生する日が待ち遠しい。”
(出典:Wisdom 2011年2月14日掲載コラムより URL:http://p.tl/zKQI )
宇宙太陽発電所という言葉を聞くだけでロマンが掻き立てられますが、これが単なる夢に終わることなく、近い将来実現することを祈りつつ見守っていきたいものですな(*´∀`*)
ということで、本年第一発目・・・予定終了でございますぅ~
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宇宙で発電したものをマイクロ波送電で地上に送る。
一見すると非常に良いように思えます。
しかし、いくつか問題があります。
第一に、オゾン層を始めとした地球環境に悪影響を与えないか?
第二に、大規模な宇宙発電施設は軍事的に極めて大きな影響をもちます。
宇宙で戦闘が起きた場合はもとより、マイクロ波をレーザー等のビーム兵器として使用することさえ考えらます。
それに、ガンダムじゃありませんが、(コロニー落としのように)落とされたら地上の被害もバカにできないでしょう。
故に、私は夢で終わって欲しいと思いますよ。
ただし、地上での無線送電や小出力のものは賛成です。どんどん進めて欲しいですね。
投稿: みやとん | 2012年1月 1日 (日) 22時20分
みやとんさん、貴重なコメントありがとうございます。環境破壊や、軍事利用をもし防げないとなると、仰る通り実現すべき技術ではないと思います。そのリスクをケアし切れるのかどうか…も踏まえて今後の技術革新を見守りたいと小生は考えます。
投稿: 花爺 | 2012年1月 3日 (火) 08時24分
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